はじめに
脳梗塞を発症入院、そして退院してからの振り返り内容をシリーズ化して投稿していますが、今回の退院を早めた要因は言語聴覚士 (ST) さんとの出会いがすべてであると思います。一番精神的に困った(参った)状態だったのが呂律が回らない状態で構音障害と他にも高次脳機能障害があるのではないかという漠然とした不安を急性期病棟に入院中はずっと持っていました。私は数年前まで社会福祉法人北区社会福祉事業団の障がい者通所施設(生活支援員)勤務で、ST さんと関わりがあるのは月に1度あるかないか。主に誤嚥を防ぐ嚥下機能低下とそのメカニズムや発話困難者の意図を読み取る職場講習等でした。音楽療法士さんと同じくらいレアな存在で、本当に何処に行けば会えるのかというぐらい接点がほとんどありませんでした。
私の困りごと
ずばり「運動障害性構音障害」でした。その他の片麻痺っぽい症状は薬物投与や何らかの運動療法で長期に向き合えばいいのではないかと症状を受容していましたが、構音障害だけは ST さんに出逢うまでは気持ちを受容できずにいました。
リハ概要
入院翌日からの早期リハ開始で、PT(理学療法士)さんによる運動療法、OT(作業療法士)さんによる作業療法、そして ST(言語聴覚士)さんによる言語療法を毎日20分単位でリハビリテーションを受け続けました。運動療法は片麻痺や腰痛っぽい症状があり、腰痛緩和のストレッチ(両手を組んで前や頭頂部に突き出し、スカシっ屁を出す姿勢で半ケツずつ20秒くらい交互に左右(表現方法に問題があることを認めます)、これを3分1セット)、を学び、作業療法は残存機能の客観評価で(特に訓練ではなく)、構音障害について一番困っていたので藁にも縋る思いで、リハビリ時間以外に気軽に自習できる資料を作っていただきました。(報酬加算してもいいと思う内容)
自習(自主練習/自主トレーニング)
毎朝、朝のバイタルチェック前に洗顔、歯磨き後に発音練習 30分。お昼の空き時間1時間(途中で下顎も疲れて涎だくだくになるので嗽も実施)、夜の就寝前30分、1日当たり2時間の自習です。
ディスクリプション内容だけでは時間が余るので、無線通信士(免許あり)の音声通話コード、フォネティックコードを思い出し発声。知人の臨床心理士・精神保健福祉士(兼公認心理士)から取り寄せた英語の早口言葉をメッセンジャー経由で教えてもらって、手書き(転記)しました。
発声法として横隔膜と肩甲骨のストレッチと歌手の呼吸法に関する資料等を CiNii で論文検索してまで、自習準備ストレッチを実践しました。
とにかく現職は外資系企業勤務のため、日本語のみならず英語の発音力も回復したかった。
無線通信系の例:朝日のア、イロハのイ、上野のウ、英語のエ、大阪のオ
Alpha, Bravo, Charlie, Delta, Echo…
英語の早口言葉例:
He threw three free throws.
Stupid superstition
Eddie edited it.
Fred fed Ted bread, and Ted fed Fred bread
A big black bug bit a big black bear, but the big bear bit the big black bug back.
Can you can a can as a canner can can a can?
舌圧子を使った口腔内麻痺側の舌の運動支援と手鏡による主観評価
舌圧子(ぜつあつし、内科で舌の上に木の板を乗せて上気道を見るやつ)は高価で且つ薬品の味がするので、知人に頼んでスーパー等に置かれている木製スプーンを幾つか取りに行ってもらいました。それでは恐らくは商売上がったりなので、知人が食べたいアイス300円分まで買って良し!としました。
帰宅してからは割りばしでも良さそうと気付きました。訓練用自助具としても使えそう。
手鏡は Aamzon で最安値を購入すると、なんじゃこの小ささ!というものが届きトホホでした。
DAISO 手鏡で良かったので、退院後は DAISO へ向かったのは言うまでもありません。
構音障害に対する自習成果は3日目に
録音をしていましたが、リハ開始1日目の夜は「言葉を発しようとしているな」、2日目の夜「言葉として成しつつ」、3日目の夜「歯医者さんで麻酔を受けた状態の発音レベル(私の個人主観)」へ…。
明らかに成果が出ており、ST さんが日に日に笑顔になってくるのが嬉しくて(褒められれば伸びる学習法だな)、私もあらゆるリハビリを前向きに、且つ将来への明るい希望を持てるように行動変容しました。
発語に関する評価は第三者(STさん)を中心とする環境
これには参りました。私はまさか障害当事者になるなんて思っていませんでしたが、HCR (国際福祉機器展)やテクノエイド(飯田橋)で福祉支援機器については自助具を含め、支援工学 (AT / Assistive Technology) 分野の基礎スキルは産業技術研究領域の大学院で身に付けています。また AT に関連するガジェット開発やハッカソン等での作成経験も有します。
私はヘルステックでは「ドS!コーチ」なる行動変容モデルを追求したパンチングマシンも開発し、大喜利の極みにチャレンジしたこともあります。
この話は長くなるので、興味をお持ちの方は取材記事をどうぞ。2015年5月31日付
おまけ:斉藤のハッカソンやアイディアソン参戦は豊富にあり、基本的にアイディアマン兼プレゼンターで企画も強みを持ちます。このドS!コーチ企画書はこちら→Engadget電子工作部 健康ガジェットを作ろう ドS!コーチ発表最終版 (slideshare.net)
私が社会福祉士を目指した理由の一つに「テクノロジーと福祉の融合」という壮大な文脈をカバーするテーマがあります。今、自分に必要なのは、まさに AT で構音障害に関する学習と研究型開発を通じて世に問う(発表する)ことではないかと。連日 CiNii で関連論文を読むも、一体誰得?みたいな押しつけ機器の開発事例などが出ており、なかなかに悲惨な状況。事実、本当に構音障害でお悩みの方に良い支援機器があるなら、一発でその話題が出てくるはず。それがなく、舌圧子ベースで苦労(工夫)が必要と言う現状。そこに研究型開発をする価値があるのではないかと考えました。
言語聴覚研究(高等教育機関)での基礎知識の学習と研究計画検討
しかしながら在宅勤務が多いとは言え昼間部の大学や大学院に専門学校通学は困難です。
そうなると、基礎研究を含め学際的研究ができそうな夜間大学か社会人大学院しかないのでは?と。また、ST 国試受験を目指さないので(理由は国試受験要件となる実習1ヶ月+卒業年度の現場実習2か月の休業は実現できそうにない。事実、社会福祉士の時でも23日間の連続した実習のため仕事を退職したほど)、純粋に支援工学として言語聴覚研究を通じ、支援機器として市場化を目指すには何が必要で、本当に利用者主体となりうるのかをアカデミックから考察したいという熱意が沸き起こりました。
現時点ではペンディングですが、まずは退院後3ヵ月、6か月スパンでの構音障害の回復を見ながらですね。来春の入学ではなく、再来年春の入学を見据えています。
まとめ
右側脳梗塞による構音障害は本当に一番の悩みで困っていましたが、医療関係者全員を尊敬と信頼し治療やリハビリに前向きになることで回復が本当に早かったと思います。
医療関係者との信頼関係強化で不治の病が不治の病でなくなる症例や早期快復は海外文献など幾つかのエビデンスがあるので、私もその通り実践するのみならず、当事者として同病者で構音障害に悩まれる方へのピアグループ(未参加)支援をしたいと思うなど、社会福祉士としての両立支援と当事者による支援機器の研究型開発をしたいというのが今の気持ちです。
本当に早期のリハ提供を受けられて感謝しかありません。
以上、ご覧いただき有難うございました。